第7回 CDTCのセミナーに行ってきました
こんにちは 勤務医の山本です。
今月もセミナーへ行かせていただきました。
今回のセミナーでも非常に重要な分野である限局的歯列矯正と歯肉歯槽粘膜形成術について学ばせていただきました。
まず限局的歯列矯正について説明させていただきます。
歯列矯正には主に全顎的歯列矯正と限局的歯列矯正の二つが存在します。
全顎的歯列矯正とは主に上下の歯全体の噛み合わせを変えていく矯正のことで、
限局的歯列矯正とは歯の中でも数本の歯の位置を変えるようなタイプの矯正です。
このタイプの矯正は歯並び全体を大きく変えるわけではなく、ゴムやブラケットと言われる装置を少しだけ使って行うことが多いです。
また、矯正と言っても単純に歯並びを治すことが目的ではなく、
歯を引っ張り上げることで歯を抜きやすくしたり土台を外れないようにしたり歯を保存するために行ったり、
傾斜している歯の戻して噛み合わせを作ったりと見た目を改善する目的ではないことも多いです。
今回のセミナーでは主に歯牙挺出と歯牙整直の実習を行いました。
歯牙挺出とは残根と呼ばれる歯の頭の部分がなくなってしまった歯を、
手前の歯と後ろの歯を使用してゴムで歯を引っ張り上げるような方法です。
この方法は隣の歯にワイヤーを取り付け、残根にフックを取り付けゴムで引っ張り上げます。
この方法にはワイヤーとゴムと、?型に曲げたワイヤーを使用します。力をかける強さは強すぎても弱すぎても良くなく、
毛細血管圧より少し弱い力(25g/cm2)をかけることが良いとされています。
歯は土台をつけて被せ物を立てるためには、最低でも歯茎から歯が1.5〜2.0mmは必要であると言われています。
これが無いと自分の歯ではない土台部分が歯茎付近にまでくることになり、
歯が割れるリスクが格段に上がると言われています。
歯の挺出には主に隣の歯に橋のようにつなぐクラスプ線(ワイヤー)と力を加えるためのゴム(パワースレッド)、
そしてゴムとクラスプ線を繋ぐためのフックが必要になってきます。
次に歯牙整直と言われる方法についても説明しておきます。
これは抜けた歯をそのままにしておいた時などによく起こるのですが、
抜いた歯の部分に空間が出来上がるので時間が経つとその空間に向かって歯が傾くことになります。
歯が傾いてしまうと噛み合わせに悪い影響を与えるので、歯の傾きを戻して再度空間を作ろうというのがこの歯牙整直(アップライト)と言われる方法です。
そのためにはスタンダードエッジワイズブラケットとフック付きリンガルチューブを使用します。
スタンダードエッジワイズブラケットは主に固定したい歯に、フック付きシングルチューブは主に傾きを戻したい歯に取り付けます。
そしてエラスティックリガチャーはブラケットとワイヤーを固定してブラケットからワイヤーが取れないようにするために取り付けます。
小学校の頃に習った梃子(てこ)の原理を思い出してみると理解しやすいと思います。
支点:傾いた歯を垂直に戻すための固定する力
力点:ワイヤーが元の形に戻ろうとする力
作用点:ワイヤーの力により傾いた歯が垂直に立とうとする力
がそれぞれの点に働いていることになります。
ここで注意して欲しいのがワイヤーが元の形に戻ろうとする力は支点となる手前の3本にも働いている点です。
支えとなる3本の歯がぐらぐら揺れていたりワイヤーからの力を支えるための十分な骨がなければ、
3本の歯にも力が働くことになってしまいます。
そのため支点となる歯に固定源となる力がなければ、
もっとブラケットの数を増やして支点として支える力を確保するなどの工夫が必要となってきます。
実際には歯に力が加わり続けるように2〜3週間に一度ワイヤーを曲げて
ワイヤーの傾きを変えて力が加わり続けるように調整する必要があります。
次に2日目からは豚の骨を用いた歯槽粘膜形成術と言われる術式を練習させていただきました。
歯槽粘膜形成術とは、歯肉の健康を目的として歯と歯茎のくっつき方、位置関係を理想的な関係に「外科的に」修正する術式のことを言います。
ここでいう「理想的な歯と歯茎の関係」とはどのようなものなのでしょう?
それは・・・
端的に行ってしまえばこのような歯と歯茎の位置関係のことを言います。
ここで注目して欲しいのが角化歯肉と付着歯肉と言われる部分です。
この角化歯肉とは硬くて強い歯茎であり口の中でも伸び縮みせず、
歯ブラシに対する圧や細菌感染に対して強い抵抗力を示します。
その中でも付着歯肉と言われるしっかりとした裏打ちのある歯茎の幅や厚み骨の厚みなどがしっかりしていると、
歯ブラシに対して強く、歯肉退縮と言われる歯茎の位置が下がってくるような問題が起こりにくくなります。
※理想的には角化歯肉の縦幅は5mm以上(2mmの遊離歯肉、3mmの付着歯肉)があるのが理想と言われています。
下の二つの写真を見てみるとわかりやすいと思います。
青い線で示された部分が上の表で言う歯肉歯槽粘膜境と言われる部分です。
ここより上側の歯茎は下側に比べて色が白っぽくなっていると思います。
この白い部分が角化歯肉と言われる強い歯茎のことです。右の写真に比べて左の写真は白い部分の幅が短く、
厚みも薄くなっているように見えると思います。
このような時に行うのが歯槽粘膜形成術です。
つまり角化歯肉を増やして歯ブラシや歯肉退縮に対する抵抗性を強くするということです。
では、どのようにして角化歯肉を増やすのでしょうか?それは上顎(うわあご)の内側の硬い歯茎を切り取って持ってきて、
角化歯肉が足りない部分に張り付けることで行います。
上顎の歯茎の歯の内側の領域の写真
上顎の歯の内側を舌で触ると思いますが、弾力がなく硬い歯茎だと思います。ここの部分は硬くて角化歯肉が強く、
最適な移植片を採取できます。
上顎の歯茎の奥側には大口蓋孔と言われる血管と神経の出入り口があるので、
そこを誤って損傷しないように部位に気をつけながら歯茎を切り取ります。
今回の実習では主にその移植片を採取する術式についての学習をしました。
術式には豚の骨を使ったものを行いましたが、少し不快感のある画像となりますのでブログには今回は掲載しないようにさせていただきます。
今回はこの辺りで終了とさせていただければと思います。次回は以前行った支台歯形成についての復習を行う予定です。あと残すところ2回となりますが、最後までブログを書かせていただこうと思うのでよろしくお願いします。