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第8回 CDTCセミナー 

こんにちは。勤務医の山本です。今月もCDTCのセミナーへ行かせていただきました!

今回のセミナーでは主に使えなくなった歯を抜いてそこに使うことができる歯を移す移植と言われる方法と歯を一度抜いて戻す再植と言われる方法と

補綴物の調整をする咬合調整について勉強させていただきました。

 再植・・・再植とは脱臼などで抜け落ちてしまった歯を再度元の歯槽骨へ戻す方法です。

この再植は歯と骨の間にある未分化間葉細胞と言われる細胞が主となり歯根膜となることで再度吸着します。

実際に抜け落ちた歯を再度その歯があった場所に固定するのは歯医者さんでしますが、

下の表は歯医者に歯を持ってくるまでに使用する液体とその液体の細胞の培養能力についてです。

一般的に時間が経つほど抜け落ちた歯を戻すときに歯根膜細胞ができづらく、歯の予後も不良だと言われています。

特に歯が抜けてから30分以内に歯を抜けたところに戻すと一般的に歯の予後は良いとされています。

上の表から一般的に専用保存液と低温殺菌牛乳に抜けた歯を浸して持ってくると歯の予後は1番良いということがわかります。

普通の一般家庭には専用保存液は存在しないので、低温殺菌牛乳が手に入りやすいです。

低温殺菌牛乳とは66°で30分滅菌した牛乳で、高温で殺菌していないためタンパク質が変性していないという特徴があります。

 移植・・・皆さんは移植と言われるとどのようなイメージがありますか?

移植と言われると臓器移植のように機能不全や病気などにより機能しなくなった臓器を亡くなった方の健全な臓器からもらうような

「ドナー(提供者による移植)」をイメージするのではないでしょうか?

ただ、このような移植は自分の体の中に代行する臓器がないから他の人からもらうしか方法がないからであり、

歯の場合は口の中に複数本存在するので自分の口の中の他の歯を移植するのが一般的です。

さらに自分の口の中から持ってくるためHVGDを発症するリスクも低くなります。HVGDとは日本語に治すと移植片対宿主病と言われ、

端的にいってしまえば体の免疫機能が外部から来たものを敵とみなし攻撃することで、移植してきた臓器がきちんと機能しなくなるような疾患です。

この疾患は他者から持ってきたものが自分の中にあるものよりも発症リスクが高いため起こる疾患であり(自分の中のものでも必ず起こらないとは限らない)、

他の人の歯牙よりも自分の歯牙を使用していくに越したことはないということです。

そういった点からも歯牙(歯)の移植の場合は他の人からもらうのではなく自分の口の中の他の歯を持ってくるような方法が一般的です。

歯牙移植は臓器移植とは異なり全身麻酔などの大掛かりな作業の必要性はなく、局所麻酔と言われる口の中の必要な部位のみでの麻酔で行われます。

 今回の実習では親知らずを移植して使う歯として用いる方法についての学習をさせていただきました。

移植における重要な点は以下のようになります。

・移植する歯の

・受容床の形成(歯を植える骨の形の形成)

移植歯が適合するように骨の中隔などを削除する

歯頚部は歯槽骨とのスペースを極力少なくする

 

次に移植後の重要な点についてです

・対合歯との咬合回避により刺激がないようにする

・緊密に縫合して歯が抜け落ちないようにする

・術後3週目で水酸化カルシウムで仮根充する

・固定は基本術後3週間で除去する

・術後2ヶ月を目安に咬合を回復する

 

移植で重要なポイントは移植する歯を必要な部分に入れる部分の骨(受容側)の形状や状態、移植する歯の形が重要になってきます。

それではどのような状態が望ましいのでしょうか?年齢や生活習慣も含めて以下に示します。

年齢と生活習慣

・年齢が若いほど予後が良い

・糖尿病やタバコなど生体の防御機能に悪影響を及ぼすような習癖は予後を低下させる

移植する歯の状態

・根未完成歯(まだ完全にできていない歯)の方が根完成歯よりも予後は良い

・複根管(足が複数ある歯)よりも単根管(足が一本の歯)の方が良い

・生きた歯根膜が付着している方が良い

・噛み合わせに参加していない歯で、根形態が適切である方が良い

受容側の状態

・移植歯の根面と受容床の窩壁が近すぎない

・移植歯に対して受容床が大きすぎない

・歯を植える骨の高さや幅がしっかりとあること

 

次に、できた被せ物(クラウン)や詰め物(インレー)を調整するときの隣の歯との接触度や高さなどを調整する

補綴基本操作と呼ばれる操作についての座学もありました。

クラウンやインレーの調整をするときにはその被せ物や詰め物が隣の歯とどこでどのくらい接触しているか?

向かい側の歯とどのくらい当たっているか?歯並びに対してどのあたりに配列しているかなどが重要になってきます。

ではその理想的な補綴装置の接触とはどのようなものなのでしょうか?

上の絵は歯と歯の接触を上から見た状態を示しています。

鼓形空隙とは歯と歯の接触点と両方の歯の上端と下端で作られる三角形のことですが、

このスペースの広さによってその歯と歯の間に物が詰まりやすいかが変化します。

左の絵が適正ですが、真ん中の絵のように広すぎると食べ物が過度に歯と歯の間を刺激し食べ物が詰まりやすく、

右の絵のように狭すぎると一度食べ物が圧入すると脱出が困難になります。

 次に歯の接触点を横から見た状態の絵です。

左の絵のように歯の頭の高さの中央より少し上の位置で横に楕円のような状態で接して、真ん中の絵のように上下の高さの変化がなく同じ高さで接触していることが理想的な歯と歯との接触です。また、右の絵のように接触点が歯並びに沿って一定の曲線で接触していることも歯が動いたりすることを防ぐ重要な要素になってきます。

 

次に噛み合わせの調整の方法についてです

噛み合わせを見るときは主にまっすぐ噛んでもらうとき(咬頭嵌合位)と歯軋りを横にした状態での噛み合わせを見る必要があります。

まず、咬頭嵌合位の噛み合わせの確認方法についてです。噛み合わせを見るときは咬合紙と言われる紙で当たっている部分を確認して、

そこを削って調整するという作業を繰り返すことで行います。

そのあたり度合いを確認するには色の付き方から判断します。

白抜けで印記されている部分は強く当たりすぎている証拠なので、窩(歯の凹み)に近い方を残すように切削することが必要です。

・支台歯以外の残存歯列で咬合が安定していることを確認する

・咬合紙は必ず両側に入れる

噛み合わせを調整するときの基本として、

・窩(凹み)が深く、咬頭(出っ張り)が鋭くなるように調整する

・内斜面と外斜面の接触では外斜面を切削するようにする

ことを意識することが重要です。

次に歯軋り(歯の横移動)をしたときの上下の歯の噛み合わせについての説明です。

作業側運動(調整する補綴物がある側に下顎を移動させた時の運動)をしたときの噛み合わせと非作業側

(調整する補綴物がない側に下顎を移動させた時の運動)の運動をさせた時で見る点が少し異なります。

作業側

・臼歯部補綴の咬合干渉は必ず除去する

・非機能咬頭内斜面の調整を優先する

非作業側

・機能咬頭内斜面の調整を優先する

 

このようなことを学習させていただきました。次はいよいよ最後のセミナーになります。

9ヶ月にわたる長期に及ぶセミナーでしたが最後まで書かせていただこうと思いますのでよろしくお願いします。